宮部みゆきの「模倣犯」を読了した。
文庫本で5巻の大作で、一作の値段が620円から820円といえば、厚みも想像してもらえるかもしれない。
前から読みたいとは思っていたものの、手に入らず、本友(本を貸しあう友達)がもっていると言うのを、待っていたら・・・どこかで紛失。
縁がないなあとしょんぼり。
ベストセラー=流通量が多いということもあり、古本屋めぐりたびに、気にかけてはいた。
全巻そろって売っていることがあまりなく、他の本を買う日々。。。
そんな中、8月にセール本の中に発見。なんと!一冊105円。ただし4巻は・・・
別のコーナーに4巻発見。ただし400円ほぼ半額。 (TwT。)
それでも即購入。
ストーリー展開は、コロンボタイプ。
読み手は、犯人を知っている状態でストーリーは始まっていく。
だまされ利用されているジャーナリストや、被害者の家族、警察に同情しつつ、すこしずつ締まっていく捜査網を見守る。
理不尽なまでの言いがかり、言ったもの勝ちなのは加害者もありなんだと。
犯人逮捕=ハッピーエンドではない。
犯人に間違われたまま死んでしまう青年とその家族。
戻ってこない家族への思い。 守れなかった家族への思い。守れなかったことに傷つきその存在が終わらない。
髪の毛についた綿菓子のように、染み込んで、存在を主張して、洗うことができないそんな苦しみが長くとどまらず続く。
明確な動機もない、理解不能な犯罪。
心理学や家族構成、生まれ、育ち・・・理由はあっても、理由を引き合いに出しても理解できない。
現実にもそんな犯罪が増えてきている。理由がわからない分被害者の傷は何時までも癒えない。
現代の犯罪そのものの連続殺人は、今の時代にふさわしい終焉を迎える。
それはびっくりするような終焉なのだが、読みながら、ああ最近の犯罪ってそうなんだと思えるものだった。犯人がわかっても、誰にもたぶん犯人本人にもわからないと思う。
もし、人間が持っている心の闇が犯罪の動機だとしたら、家族が、友人が、自分を少しでも気にかけてくれる人たちが、振り払ってくれる闇ではないかと思いたい。
どの方面から読むのか?かなり読み応えのある作品だった。